砂と鉄

よく分からない備忘録たち

『哭悲』の感想

哭悲がめちゃくちゃ最高でした!!!


この最高は、スプラッタ・ホラー映画が怖くて最高の意味で言っている最高!!であるため、ホラー映画が苦手な方は鑑賞に注意が必要です。

(R18+の作品です。怖い・グロテスクであるという描写があり、この指定がされている映画を、ホラー映画が苦手な方が興味本位や度胸試しで見ることはおすすめできません。逆に苦手な方がこれを最初に見ることで、ホラー映画への耐性をレベル1からレベル99に強引に引き上げることもできそうですが、一歩間違えばトラウマとなります。)

 

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以下に感想など書きますが、ホラー映画が気になる方のためにも「どれくらい怖いのか」も書いておきます。

映画の内容に触れています。

ネタバレがあります。

 

 

 

 

 

どれくらい怖いか

R18+指定ですが、見終わったあとに「なるほど~!」となりました。

R18指定の作品のホラー映画は『グリーン・インフェルノ』『屋敷女』『ムカデ人間2』『八仙飯店之人肉饅頭』などありますが、こうした作品と一切遜色なく肩を並べられるスプラッタ映画です。

具体的には、

・関節を逆に曲げる

・人が落下し地面に叩きつけられる

・目に物や指を突き刺す

・性的暴行

・火傷

・内臓

・乳児を殺害

・嘔吐

・食人

・救いのない終わり

などの描写がたくさんあります。ホラー映画としては最高ですね。

また直接映されない部分もありますが、想像で「こうしているな……」と分かるため『悪魔のいけにえ』のように想像させられてぞわぞわします。

私はスプラッタ映画が大好きなので、笑顔で見ていました。得意な方は焼き肉が食べたくなる素晴らしい作品ですが、苦手な方はトラウマになると思います。(私は鑑賞後に焼肉食べたいと久しぶりに感じました。)

ホラー映画の『ハイテンション』『悪魔のいけにえ2』『ムカデ人間』『失眠 ザ・スリープ・カース』『グロテスク』『着信アリ』『来る』を見ていて最高!!、スプラッタ描写楽しい!!になる方は楽しく見られると思います。

普段スプラッタ映画を見ない、R18+作品を見たことがない方はおすすめしません。

 

光の明滅の注意がありますが、エンドクレジットの際に起こるため本編のみを鑑賞する場合は光の明滅が苦手な方でも問題ないと思います。しかし、エンドクレジットが急に入るためお気をつけください。

『ルクス・エテルナ 永遠の光』『アレックス スターライトカット』などが平気な方は、光の明滅は控え目に感じられると思います。

私は『ルクス・エテルナ 永遠の光』を見ていて(わ~頭がくらくらして気持ち悪くなってきておもしろ~~!!)と思っていたため、平気でした。(※光の明滅が苦手な方は本当にお気をつけください)

 

 

感想

人間の欲望の怖さ

ウイルスの影響で欲望や凶暴さを抑圧する機能が失われた人間がどうなるのかの描写が容赦なく、最高でした。

私も普段生活していて、熱した油に自分の指を突っ込んだらどうなるんだろう、火のついた煙草を手に押しつけたらどうなるんだろう、自分の首を切ったらどうなるんだろう見てみたい!(死ぬうえに、痛いのは怖いため絶対しない)と好奇心で思うのですが、そういった好奇心は恐怖や理性、善性(または法で裁かれる恐怖)で抑圧されていると感じます。

しかし、そういった欲望のたがが外れたうえに、「自分ではなく、他人でやりたい」という最悪の方向に遠慮なく加害の矛先が向かうのが怖いです。

人生どうにでもなれと電車や人混みで犯罪を行う人の心理をさらに純粋に悪意を詰めて、人間の知能と想像力を最悪に残虐に煮詰めた場面が作品の大部分を占めるので、一時たりとも気が抜けません。最高に怖い場面が続くので、最高でした!!

でも、人体実験や人が泣き叫ぶ様を「おぞましい」と感じつつも「なぜしてしまったのか」「してみたら楽しいのか?」「やったことがないことをどうして拒絶できるのか」と好奇心を抱いてしまうのを濃縮して実行に移してしまったかのようなある意味無邪気な(していることは邪悪)人々見て、私も脳の機能が壊れればしてしまうのではないかととても怖かったです。

特にウイルスに感染した人々の特徴が瞳が大きくなる、くらいなため「誰が感染しているのか?」が分かりにくくも画面に映ると不気味で本当に怖かったです。

体液(血液・唾液)が作中で印象的に使われており、体液から感染するのではないか、相手を体液で汚しているのかと感じられてぞっとしたのもよかったです。

 

個人的には、電車で声を掛けてきたセクハラ中年男性が「理性があるときは女性に声を掛ける、手に触れる。女性が真っ当な権利を主張し、誘いを断ると独り言をぶつぶつ言う(これだけでも本当にやっかいなうえ、最悪)」からウイルス感染後に「性的暴行を振るう」に一気にいってしまうところは、「女性が被害側に多いことへの問題提起と、普段は秩序や理性で押さえている欲望の怖さ(おぞましさ)」がありすごかったです。

(あと、電車でなくとも、知らない異性に必要がない以外に声を掛けるのは普通に気持ち悪いんだよな……その気持ち悪さが自身で認識できていないのも……になりました。)

 

 

人間の想像力の怖さ

拷問は人類が生み出した「人を殺さない範囲で与えられる可能な限りの苦痛を与える方法」ですが、この映画も「思いつくままに他人で欲望を満たそうとし、傷つけ、苦しめたい」という行為が繰り返し描かれます。

それも、「相手が死んでも構わない、思いつくままに加害する」と欲望と想像力をもとに動き続けるため、作中で繰り広げられる様は、素人が思いついた残虐な行為をひたすら繰り返していく地獄です。(地獄は比喩ですが、阿鼻叫喚の惨劇が続きます。)

また、日常にあるものをたくさん使って人が傷ついていく展開に、本当に起こったら怖い、本当に痛そうだ(痛みを想像しやすい)、こんなこと絶対されたくないと思います。

特に、ウイルスに感染した側も思考力は残っているため、自身が加害してしまうことへ罪悪感は持っており、泣きながらも襲い掛かって来るのは「欲望を理性で抑えつけ慣れてしまったがゆえの、人類が感じている理性や社会秩序への傲慢」「剥き出しになった欲望の恐ろしさ」がすごかったです。

肥大化した脳で人間は社会を維持し、死亡率を減らすことに成功しましたが、そういった脳の機能が一部失われた際に持ちえた想像力と欲望が暴走していく様に、脳と知性って怖いな……と改めて感じています。

 

また主人公たちに訪れる最後の場面も壮絶かつ絶望的で最悪、最高です。

誰かを大切だと思う思考は残っている一方で、傷つけたい、めちゃくちゃにしてやりたい、泣き喚いて苦しむ様子をたとえ大切な人であっても見たいという欲望を止められない苦しみが本当によかったです。

誰かを大切だという気持ちと、大切な誰かを傷つけてでも自身の欲望を満たしたいという欲求はあまり両立せず、均衡を保つか、社会的(法)に許される範囲で欲望の方が抑えられていると思います。しかし、その均衡や欲望が抑えきれなくなったとき「大切な相手だが傷つけたい」「好きだが、思いつく限りのままぐちゃぐちゃにしたい」という思いにつながる恐ろしさと、諦めと絶望が本当に好きです。

 

さらに、ウイルスに感染した人々が感染者同士はあまり襲っていないようなところが気になったのですが、ウイルスに感染した人々はお互いに恐怖や怯えよりも欲望の方が勝っているため、ウイルスに感染していない人々を襲った方が効率よく欲望を満たせるのか……と気がつき最悪でよかったです。

ウイルス感染者同士が協力したり、しなかったり、裏切ったり、いろいろな人間模様が見られるのも、人としての理性や欲望を抑える機能が失われるだけで、それ以外の機能はしっかりあるという事実に絶望できるのが最高です。

 

 

すべての善が失われる展開

何気ない善意が私は好きです。

席を譲ったり、道を教えたり、そういった何気ないことです。ホラー映画もお互い助け合う、自らは犠牲になっても誰かを助けるといった感動的な場面があります。

しかし、『哭悲』にはほとんどありません。ありがとうございます!!(最悪)

誰かを助ける余裕など市民はおろか、警察などの公的機関にもありません。さらには政治のトップまで亡くなります。

一部で救いを感じる部分はありますが、まったく救われません。善意によってもたらされていた社会という秩序は強烈でおぞましい欲望に突き動かされた人々によって、あっけなく一日で崩れていく様が本当に最高です!!!(真・女神転生シリーズやセブンスドラゴンシリーズなどで都市が崩壊することに最高!と感じてしまうようになった人の末路です。)

「あなたの恩は忘れない」というフラグかと思った部分もあっけなくウイルス感染で崩れ、恋人を迎えに行く間に感染してしまった絶望も本当に最高です。

また電車の中での殺人からウイルス感染で一つの電車という箱が、人の亡骸と体液と悲鳴で埋め尽くされていくのが素晴らしかったです。

救いになるかもしれない医者も倫理的には許しがたい(理解したくない)行為に手を染め、ウイルスに抗体を持った人もおそらくですが最後に亡くなっています。(しかし、私も同じ立場に置かれたとすれば、抵抗できない乳児の安楽死を選択してしまうかもしれません。)(追い詰められた環境下での行動のため、医者の行動も理解はできます。同情や理解はできませんが。)

絶望しかなくて本当に最高ですね……

 

 

その他何も考えていない感想

主人公たちの部屋に、スイッチある!!となりました。何を遊んでいたのか気になります。

 

序盤から指を切られる主人公に、かわいそう……となりました。(かなりの重傷で、これは"主人公でも死ぬ作品"かなと思いました。『屋敷女』も同じパターンのため)

 

人が建物から飛び降りて地面に叩きつけられるところを映してくれるホラー映画は少ないため、最高でした。人が飛び降りたときのSEが好きです。

 

病院に逃げ込んだのはよかったのに、緊急放送で「午前11時」と判明するところで(えっ?この絶望的な展開でまだ午前11時?)となりました。体感では午後6時くらいの疲労を感じていました。

 

警察の命令でシャッターを閉じただけなのに、二回も殴られ、スマホを取られ、スマホの画面を(オタク)趣味の画像にしていたのを見られ、凄惨にも丸刃のついたドリルで体を刻まれて亡くなった方がかわいそうでした。

 

眼球が潰された痕を利用して性的暴行を行う場面で、「『ムカデ人間3』で腹に穴を開けて性的暴行する(夢オチですが)のと同じだ~~!」と思って楽しかったです。(最悪)

あと、複数人で性交している人々が複数人分の肉塊が血まみれで絡み合っているようで、ある一種の芸術品のようでありながらも真・女神転生シリーズで金子一馬さんがデザインされた悪魔のようでもあり、迫力と怖さがすごかったです。

 

医者がいた部屋に入れて、「生きた~…」となった瞬間、銃を突きつけられる、強制的にシャワーをさせられる、乳児が殺害されるのを見てしまう、好き勝手にべらべら話す医者の鼻につく話をほぼ強制的に聞かされる展開に、(この医者……死ぬな……)となりました。

 

3Dプリンターで銃を作る医者、だめな倫理観と才能があわさっていて最悪だと思いました。才能を悪用するな……あと、軍から銃弾を盗むな……軍にいて訓練したときから倫理がだめだこの医者……

 

3Dプリンターであの銃を作ったということは、3Dプリンターに使った材料が黒色なのか、銃を出力した後に着色したのかなと思いました。(たぶんモデルガンを使用しているだけですが)

 

医者がウイルスに感染した直後に、「(乳児を)殺したのはめちゃくちゃ最高だった」と言っていましたが最悪すぎてすごかったです。

 

最後にデスメタル(?)の曲で終わるのが勢いありすぎて最高でした!